ほんとの空は見えたのか・・・ vol.1
九月某日 久しぶりの晴れ予報に心躍らせ、僕は福島県にある百名山の一つ
安達太良山を一人目指していた。
安達太良山といえば高村光太郎の「智恵子抄」の詩が有名であろう。
「あどけない話」という詩の中で、智恵子いわく東京の空はほんとの空ではない
安達太良山の山の上に出ている青空こそが、ほんとの空だと言っているのだ。
ならば、ほんとの空を見るために行くしかない。そう思っていたのだが、中々
天気が安定せず、ようやく予報が良いときと休みがぶつかり絶好のチャンスが
巡ってきたと心躍らせ車を走らせた。
国道115号に入り土湯峠方面に向かう。時間は午前7時を超えていた。
広く快適な道路を運転しながら、時々見る空は薄暗い雲に覆われている。
僕は一抹の不安を感じながら、山頂に着くころには空が青く彩られていると
天気予報を信じていた。
途中道の駅で休憩を挟み、駐車場のある「あだたら高原スキー場」に着いたのは
8時過ぎ。広い駐車場に結構な数の車がある。
いよいよ、登山開始と心弾ませるところだが、目指す山頂方向を見て僕は愕然と
していた。
ほんとの空を味わうためにやって来た安達太良山山頂は完全に雲に覆われていた。
以下次回に続きます。