ほんとの空は見えたのか・・・ vol.8 安達太良山
道誤りて疲労倍増・・・
この写真は近くまで行き撮ったものだが、それは、かなり遠くからでもはっきりと視認出来た。赤く「岳」とかかれた漢字と矢印の表示、ここにきて集中力を欠いていた自分は吸い込まれるように、この岩の方向へ歩みを進めてしまった。
勾配は僅かに下っていく。もちろん登山の場合一直線にあがって行くわけではないが、にわかに不安が湧いてくる。もしかして間違ったのではないかと。
しかし、人間とはすぐに間違いを認めたくないもので、いやいや大丈夫だろうと後ろを振り返りもせず進んでいくと。開けてきた登山道はずっと下っている。
いよいよ、不安は心の中で増していき、疲れとは違う意味で汗が出るのを感じていた。
写真の岩の場所を過ぎ、一度後ろを振り返る、正直この時点でほぼ間違っていることを確信していたのだが、とりあえずもうちょっと先へ進んでみようと思い、前進を続けた
それから五分ほど歩いただろうか、先のほうに案内の標識のようなものが見える。
自然と歩みは早くなる。そしてそこに着くと・・・
やはり、自分は逆方向に歩いていた。山頂に向かっているはずが、下山ルートに入っていたのだ。そして、あの岩に書かれていた「岳」の意味が奥岳だと悟った。
体の力が抜ける。薄々分かっていたが実際に答えを出されるとがっかりするものだ。
そして、これからどうしようと考える。もちろん此処まできたら山頂まで行かなければ意味がない。しかし、一方で相変わらず上空には雲がかかり、仮に山頂まで行っても素晴らしい展望にありつける可能性は非常に低い。
「このまま降りるか」疲れた体に悪魔の囁きが響く。
でも・・・・
ふうと溜息をつき標識が指し示す方向に視線を向けた。
そしてすぐに踵を返す。
「山頂へ行こう」
心の中ではなく、話相手もいないのに僕は一人、そう口にだしていた。
以下次回