ほんとの空は見えたのか・・・ vol.9 安達太良山

いざ頂上へ 進路を間違えた位で挫折していたのでは登山など出来ない。当たり前のことだった。 幸い疲れといっても精神的なものの方が大きく、ここまで勾配がさほどきつかった訳でもないので、肉体的にはまだ余裕があった。 程なくして牛の背にたどり着いた。…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.8 安達太良山

道誤りて疲労倍増・・・ この写真は近くまで行き撮ったものだが、それは、かなり遠くからでもはっきりと視認出来た。赤く「岳」とかかれた漢字と矢印の表示、ここにきて集中力を欠いていた自分は吸い込まれるように、この岩の方向へ歩みを進めてしまった。 …

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.7 安達太良山

森林限界の先へ・・・ 赤茶色の土やごつごつと転がる大小の岩、登山道の姿が標高の高さを教えてくれる。 森林限界を超え、視界は良くなったのだが、肝心の空模様は芳しくなく一面の雲が空を隠していた。 ほんとの空を見に来たはずなのにという思いは歩きなが…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.6 安達太良山

いよいよ本格登山の開始 くろがね小屋を出発すると、いきなり道は人一人通るのがやっとな位狭くなる。さらに傾斜もきつくなり、まさにギアチェンジが必要だと感じる。しっかりと重心を意識して一歩一歩慎重に歩を進める。久々の登山であったので息が乱れるの…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.5  安達太良山

くろがね小屋に到着 目指す建物は一歩歩くたびに視界の中で大きくなってきた。 ここまで、殆ど休憩を取っていなかったので汗が体にまとわりついている。息も乱れがちにくろがね小屋の前に立つと、その立派さに思わず息を呑んだ。 壁の塗装は剥がれかけている…

ほんとの空は見えたのか・・・vol4  安達太良山

再びの静寂の登山道であった。わずかに鳥のさえずりが遠方から聞こえてくるが他の登山者の気配はない。だいぶ標高を稼いだのか、明らかに木の高さは低くなり、天への視界が開けてきた。相変わらず雲に覆われた空は雨の気配はなかったが、なんとも気分を塞ぐ…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.3

登山道に似合わない音。その正体は車だった。 気づいた瞬間には、前方にもう姿を現している。登山道をすべて占拠するように目一杯の幅を使ってイカツイ車が見えた。一瞬なにが起きたか唖然としかけたが、幸いにもすぐ横に人一人はいれるような隙間があったの…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.2

さて、いざ山に登ろうと思っても肝心の天気がイマイチでは気分も乗るわけではなく 思わず温泉でも入ってこのまま帰ろうかという気持ちにもなったが、雲に山が覆われ ていても結構な数の登山者がいたので、僕も一人いそいそと登山準備をして、登山口 へと向か…

ほんとの空は見えたのか・・・ vol.1

九月某日 久しぶりの晴れ予報に心躍らせ、僕は福島県にある百名山の一つ 安達太良山を一人目指していた。 安達太良山といえば高村光太郎の「智恵子抄」の詩が有名であろう。 「あどけない話」という詩の中で、智恵子いわく東京の空はほんとの空ではない 安達…