ほんとの空は見えたのか・・・ vol.9 安達太良山

 

 いざ頂上へ

 

進路を間違えた位で挫折していたのでは登山など出来ない。当たり前のことだった。

幸い疲れといっても精神的なものの方が大きく、ここまで勾配がさほどきつかった訳でもないので、肉体的にはまだ余裕があった。

程なくして牛の背にたどり着いた。ここまでくると頂上は近い。雲により展望は相変わらず悪いが、気持ちは高揚してくる。

 

 

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写真では分かりにくいかも知れないが、岩のマーキングが丁寧すぎるほど頂上方向に続いている。迷う登山者が多いとも思えなかったが何か理由があるのかもしれない。

 

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頂上に一歩一歩近づいていく。ほんとの空を見ることは難しくなったかもしれない。

でも歩くペースは確実に上がっていた。

 

以下次回

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ほんとの空は見えたのか・・・ vol.8 安達太良山

 道誤りて疲労倍増・・・

 

 

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この写真は近くまで行き撮ったものだが、それは、かなり遠くからでもはっきりと視認出来た。赤く「岳」とかかれた漢字と矢印の表示、ここにきて集中力を欠いていた自分は吸い込まれるように、この岩の方向へ歩みを進めてしまった。

 

勾配は僅かに下っていく。もちろん登山の場合一直線にあがって行くわけではないが、にわかに不安が湧いてくる。もしかして間違ったのではないかと。

 

しかし、人間とはすぐに間違いを認めたくないもので、いやいや大丈夫だろうと後ろを振り返りもせず進んでいくと。開けてきた登山道はずっと下っている。

いよいよ、不安は心の中で増していき、疲れとは違う意味で汗が出るのを感じていた。

写真の岩の場所を過ぎ、一度後ろを振り返る、正直この時点でほぼ間違っていることを確信していたのだが、とりあえずもうちょっと先へ進んでみようと思い、前進を続けた

 

それから五分ほど歩いただろうか、先のほうに案内の標識のようなものが見える。

自然と歩みは早くなる。そしてそこに着くと・・・

 

 

 

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やはり、自分は逆方向に歩いていた。山頂に向かっているはずが、下山ルートに入っていたのだ。そして、あの岩に書かれていた「岳」の意味が奥岳だと悟った。

体の力が抜ける。薄々分かっていたが実際に答えを出されるとがっかりするものだ。

そして、これからどうしようと考える。もちろん此処まできたら山頂まで行かなければ意味がない。しかし、一方で相変わらず上空には雲がかかり、仮に山頂まで行っても素晴らしい展望にありつける可能性は非常に低い。

「このまま降りるか」疲れた体に悪魔の囁きが響く。

でも・・・・

ふうと溜息をつき標識が指し示す方向に視線を向けた。

そしてすぐに踵を返す。

「山頂へ行こう」

心の中ではなく、話相手もいないのに僕は一人、そう口にだしていた。

 

以下次回

 

 

 

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ほんとの空は見えたのか・・・ vol.7 安達太良山

 

森林限界の先へ・・・

 

赤茶色の土やごつごつと転がる大小の岩、登山道の姿が標高の高さを教えてくれる。

森林限界を超え、視界は良くなったのだが、肝心の空模様は芳しくなく一面の雲が空を隠していた。

 

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ほんとの空を見に来たはずなのにという思いは歩きながら心の片隅に常にあった。

もちろん自然相手のことなので仕方がないのだが、そうそう気軽に来れる訳ではないので何とも残念ではあったが、頂上に上がる頃には青空が見えるのではないかという僅かな希望を信じて頂上を目指し続ける。

 

それからしばらく経つと登山道が広くなる、というより何処を歩いてよいのか分かりづらい場所がよくあった。もちろん所々目印はあるし、ロープが張られている場所もあるのだが、ちょっと惰性であがっていると知らずのうちにコースを外れていることが何回かあった。

それというのも、ここまで登ってきたは良いものも雲が立ち込めているせいで、どこが山頂なのか良く分かっていないことも一因にあったのかも知れない。

疲れもピークを迎え、ゴールもイマイチ分からず、ちょっとしたコースロスを繰り返したせいか、心ここにあらずといった感じで歩を進めていた。

そんな時、遠くからもはっきりと確認できる岩に記された目印を見て、何の考えもなくそちらに向かった自分は大きな後悔をするのであった。

 

以下次回

 

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ほんとの空は見えたのか・・・ vol.6 安達太良山

 

いよいよ本格登山の開始

 

くろがね小屋を出発すると、いきなり道は人一人通るのがやっとな位狭くなる。さらに傾斜もきつくなり、まさにギアチェンジが必要だと感じる。しっかりと重心を意識して一歩一歩慎重に歩を進める。久々の登山であったので息が乱れるのが早い。

決して気温が高いわけではないが、汗がじんわりと全身から噴出すのを感じた。

思わず上着を脱ぎ半そでになる。虫が気になったが仕方ないことだ。

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しばらく歩くと、道は開けたがより傾斜がきつくなり、所々岩を手でつかみながら先へと進む。ようやく本格的な登山を味わうことが出来た。そして相変わらず静かな登山ではあったが、ぽつぽつと他の登山者の姿をみるようになった。昨今の登山ブームの影響なのか、若い女性の登山者も結構いたが、やはり中年夫婦の組み合わせが最も多い。

平日なので集団のツアー登山者は登山中見かけなかったが、よくよく考えるとロープウェイを使って別ルートから頂上を目指すパターンの方が多いのであろう。

まあ、自分はマイペースで登山が出来るボッチ登山が好きではあるのだが、仲良さそうにする姿を見ると若干の羨ましさを感じるのも事実であった。

そんな感情を覚えることもあるが、それでも多くの時間はただ頭を空っぽにして黙々と頂上を目指す。それが登山の素晴らしさだとも思う。やはり山にくれば日頃の嫌なことなど下界での些細なことに過ぎないと思えるのだ。

 

以下次回

 

 

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ほんとの空は見えたのか・・・ vol.5  安達太良山

 

  くろがね小屋に到着

 

目指す建物は一歩歩くたびに視界の中で大きくなってきた。

ここまで、殆ど休憩を取っていなかったので汗が体にまとわりついている。息も乱れがちにくろがね小屋の前に立つと、その立派さに思わず息を呑んだ。

壁の塗装は剥がれかけている部分があるが、古臭さを感じないし、おそらく3階部もあるだろう高さは山小屋というより旅館といわれても違和感を感じない。

そして、正面の壁には太陽光パネルが取り付けられている。当然電線は繋がっていないので貴重な電力をこれで担っているのだろう。

 

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小屋の前では数名の登山者が休んでいた。まだ昼時には早かったが僕もザックをおろし

水分補給とコンビニおにぎり一個で疲れを癒した。

岳温泉の源泉部は小屋の上方にあるのだが、有毒ガスが発生しているようで立ち入り禁止となっている。確かに風が吹くと硫黄のような匂いがさらに鼻を突いた。

 

汗も引き、足の疲れも取れたので再び登山を再開する。

そして、ここからの登山は、いよいよ本格登山といえる旅になった。

 

以下次回

 

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ほんとの空は見えたのか・・・vol4  安達太良山

再びの静寂の登山道であった。わずかに鳥のさえずりが遠方から聞こえてくるが他の登山者の気配はない。だいぶ標高を稼いだのか、明らかに木の高さは低くなり、天への視界が開けてきた。相変わらず雲に覆われた空は雨の気配はなかったが、なんとも気分を塞ぐものだった。

 

どれほど歩いただろうか、時計をみると出発から二時間近くたっている。

そろそろ、中間ポイント「くらがね小屋」に着いても良いころだよなと思っているところ、それはようやく僕の視界に入った。

 

 

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森林限界が始まろうかという山の中腹にそれは存在していた。めざす「くろがね小屋」だった。

遠くからも十分に確認できる建築物は、前もって聞いてはいたが想像以上に立派なものだった。

こうなると自然に歩むスピードも速くなるものだ。ここまでが余り変化のない単調な登山であっただけにテンションも一段と上がってくる。

着実に小屋へと近づいていくと、鼻腔を突く硫黄のような匂いを感じた。岳温泉の源泉も近いことの証拠だった。

 

以下次回

 

 

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ほんとの空は見えたのか・・・ vol.3

 

登山道に似合わない音。その正体は車だった。

気づいた瞬間には、前方にもう姿を現している。登山道をすべて占拠するように目一杯の幅を使ってイカツイ車が見えた。一瞬なにが起きたか唖然としかけたが、幸いにもすぐ横に人一人はいれるような隙間があったので慌ててそこへ逃げ込んだ。

 

その車は一世代前のランドクルーザーだった。運転手は呆気にとられている僕を見て軽く会釈をしてそのまま行ってしまった。車の脇にはうろ覚えだが「岳温泉共同組合」のステッカーが貼ってあった。写真を撮ろうと慌ててカメラを取りかけたが既にその姿は消えていた。

この先には岳温泉の源泉があるとは聞いていたが、まさかの出来ことであったが、気を取り直し再び歩みだす。

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改めて登山道を見てみると道の両端にタイヤ痕が残っている。それにしても段差も結構あり大きな石が所々にある道を良く走ってこれるなと感心するばかりであった。

 

さて、次の目標はくろがね小屋である。小屋には温泉があるというが、とりあえず温泉は登山の後と決めていたので入る予定はなかったが、大変立派な山小屋というので実際に一目見ておきたいと思った。

以下次回

 

 

 

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